パリのビーズ屋さん I
そこで、パリのビーズ屋さんに行って、何か適当なものはないか探してみることにする。
毛糸ショッピングには全く適さないパリであるが、服飾アクセサリー関係の素材となると、さすがファッション産業の街、大変豊富で、特に問屋さんが事欠かない。
例えば、18区モンマルトルのふもとあたりから今はアフリカ系の人々が集うバルベス(Barbes)の界隈など、布地の大量販売店が続く、縫製業の方々にはたまらない地域である。
ビーズ等、手工芸材料品は、昔から3区のマレ地区の北側と決まっているらしい。
地下鉄の駅で言えば、11番線、Rambuteau, Arts et Metiers, Temple の辺りである。
このあたりは、古くから、手工芸や印刷業に携わる人々が居住し、産業を発展させていた。
今でも服飾関係の問屋さんが連なる。
地下鉄の駅名になっているArts et Metiers といのは、英語でいうと、Arts and Crafts、日本語で言うと、工芸美術のことである。ここには工芸技術博物館もある。
東京で言えば、神田の神保町から馬喰町のあたりのようなものと言えるか。
マレ地区というのは、パリ発祥の地であると同時に、その多様な歴史経験が面白い界隈である。
今はもっぱらゲイの方々が居住、集う地区と知られているが、同時に昔からユダヤ系のコミュニティがあることでも知られている。マレ地区を南北に通る主要な通りであるrue du Temple や rue du Vieille-du-Temple のTemple は、数年前のベストセラー「ダヴィンチコード」にも出てくるテンプル騎士団がオフィスをここに構えたことに由来する。
さらに、マレ地区北部には、パリ最初の中華街もある。
この中華街は、マレの北側、Arts et Metiers の駅のすぐ南のあたりにある。
1930年代、第一次世界大戦の後に、中国から沢山の移民が来て、住み着き、革製品産業や宝石産業に従事していたらしい。
今でも、中華料理店が続き、ファッションアクセサリーの小売店や問屋の店番をするアジア系の容貌の女性たちが目につく。
マレ地区の北側は、南側に比べて観光大目玉や華やかさには欠けるが、時間と根気のあるファッション関係の方々にはおそらく非常に興味深い地区であろう。
冴えない店構えだが、服飾アクセサリー問屋さんがあちこちにある。
問屋さんは、一見様お断りの店も多いし、まとめて買うことしかできない店も多い。
一見さんお断りでなくても、店に入れば、モノが乱雑に置いてあり、根気よくみていかないといけない。
従って、一つ一つしかも丁寧に歩き回るしかないのである。
さらに、一般消費者相手ではないので、週日は早く閉まり、土曜日には閉まっている店が殆ど。
日中はフルタイムの仕事に携わる勤労者の私には、従って、休みでもとらないと、とても問屋回りは難しい。
しかし絶望することはない。
問屋街の周縁には、必ず一般向け小売店、しかも市価よりも安い店があるものである。
さらにそういう問屋街の一般向け小売店は、人通りの多い表通りに面しているものである。
ここは、パリよりもさらに歴史の旧い大都市東京の出身である強みで、生来不器用とは言え、そういう勘だけはある。
マレ地区の手工業問屋街である北部と繁華街である南部の境くらいが狙いどころか、と検討とつける。
という訳で、具体的なあてもなく、マレ地区北側の方向にパリ市営コミュニティ自転車Velib を駆う。
いろいろと考えたのは良いが、実際にその地域に着いてみると、なんとVelibの駐輪場が満杯である。
Velibの難しいところは、駐輪する場所がなかったり、自転車がなかったりするところ。
そういう時は、次の人が来るのを待つか、別の場所を探すしかない。
人通りの多いrue des Archives を繁華街方向に南に下ることにする。
Rue des Archives は北方向に一方通行なので、自転車を引いて歩いていく。
BHVの近く、大分南に下ったところで、運良く駐輪枠がみつかった。
さて、少し北へ戻るか、と数歩行ったところに、なんと、ビーズ屋があった。
ウィンドウにはビーズが沢山並んでいる。
入ってみると、大きい店で、客が沢山。
上から下まで、右から左まで、さらに奥の奥までビーズが並んでいる。
客は皆、身体をかがめ、ビーズを一つ一つ検討している。
並んでいるビーズの種類のあまりの多さに、一体どこからはじめてよいか分からない。
まるで不思議の国のアリスの世界。圧倒され、くらくらする。
是非行ってみてください。非常に面白いところです。
住所は 50 rue des Archives 75003.
看板は無いし、ビジネスカードは無いし、レシートさえもない。
家に帰ってからGoogle で調べたところによるとTout à Loisirsという名前の店らしい。
写真では店のシャッターが閉まっているところでごめんなさい。
雨が降ってきたので、店内で待っていたら、閉店時間になってしまった。。。
さて、ビーズ。
とりあえず、他の客を真似て、一番近いところから、一つ一つ見てみる。
困ったことに、ビーズの種類が多いだけでなく、それぞれの種類の中の一粒一粒の形が不揃いで、それぞれが独自。欠けていたり、傷が入っていたりもする。本当に、真剣に、一つ一つ検討していかないといけない。あっという間に二時間たってしまう。
はじめは一体どうしたらいいか分からず、色とりどりのきれいなビーズに次から次へと目を奪われていたが、しばらくして、自分で編むネックレスに適当なものを選ばないといけない、と考える。
すなわち、金属製のものが表についていないもの、そして、穴が大きいもの、である。
金属製のものが表についていないのは、殆どである。
殆どがガラス製で、金属が表についていない。面白い石のものも沢山、さらに、木のもの、陶製のもの、貝殻のもの、訳のわからないもの、もある。
しかし、穴が大きいもの、となると大変難しい。編むことが前提となっているドイツとの違いか。
穴を一つ一つ確認する作業を店内3周したあと、最終的に選んだのは、ガラスの内部に金属製の模様が入っているもので、穴が大きいもの。
これは、ターコイズブルーとシルヴァーの模様がガラスの内部に入っている。
一粒1.90ユーロ。
これはボルドー色のラインとシルヴァーの模様がガラスの内部に入っている。
前者よりも小さくて、一粒1.50ユーロ。
これは、グリーンとゴールドの模様がガラスの内部に入っている。
中国製らしく、「愛」という字が刻まれたヴァージョンもある。。。
さらに小さくて、傷が多く、形も不揃いで、一粒0.80ユーロ。
これは、内部にマリンブルーのうずまき模様が入った筒型。
欠けていて、傷も多く、サイズは全く不揃いで、一粒0.60ユーロ。
帰り道、rue des Archives の1ブロック先を並行している rue du Temple を歩くと、なんとそこにもビーズ屋があった。
7時の閉店時間だったので、中には入れなかったが、店内には人が沢山。
外からみた限りでは、50 rue des Archives の店よりもはるかに面積が小さく、小袋入りの小さめのビーズが沢山壁に並んでいる。
客が多いということは、値段が安いのであろうか。
La Perlerie 22
22 rue du Temple
75003 Paris